イバラッパー ロングインタビュー(後編)

ibarapper07a


2014年、茨城の音楽界に梅ぼし、いや、キラ星のごとくあらわれたご当地ラッパー「イバラッパー」。
標準語と茨城弁を巧みにあやつるバイリンガルラップ。コミカルさを前面に出しつつも、茨城県民なら共感せずにはいられないツボをおさえたリリック(歌詞)。ごじゃっぺかと思いきや、意外と固いライム(押韻)。
ラップのみならず、トラックメイキングやレコーディングからCD制作まで、できそうなことはとにかく自分でやってみるというイバラッパーに、デビューのきっかけや曲作り、今後の展望などについて語ってもらった。

ロングインタビューの後編となります。前編はこちら→イバラッパーロングインタビュー(前編)

イバラッパーの歌詞について

―では歌詞についてのこだわりもお聞かせいただけますか。

まず、私の場合、茨城のご当地ラップしかやらないという縛りを設けています。最初の目的がご当地ソングを作りたかったわけですから当然ですよね。さらに、なるべく茨城弁も入れていこうと・・・(笑)

たぶんそれだけで明らかに他のミュージシャンとは違う歌詞になるわけですが、名所や名物、茨城弁をただ並べるだけなら誰でもできてしまうので、そこにどうやって自分の色を付けていくかが重要だと思いますね。

例えば、「常総」の曲でクロサワというおいしい若鶏の丸焼きのお店を紹介しているんですが、お店の名前をいうだけなら誰でもできるんですよ。それを「クロサワ 石下のケンタッキー」と言うことによってイバラッパーの色を付けて、パンチラインにしているわけです。

他には、いろんな名所・名物の中から何をセレクトするかでもイバラッパーの色を付けていきます。さきほどの「常総」には「十一面山 砂丘珍しい」というフレーズがありまして、これは非常に珍しい鬼怒川の河岸砂丘のことを紹介しているのですが、地元でもあまり知られていないけど実はすごいもの、特徴のあるものを紹介することで、地元の人に地元を再発見してもらうというのも音楽活動の目的の一つなんです。

―ただ…正直ラップというだけで敬遠される方も多いのではないですか

たしかにラップのイメージというと、いわゆるギャングスタ系を連想される方は多いでしょうね。マッチョでバイオレンスなイメージというか。見た目も言ってることも、なんかコワいよ…的な(苦笑)

でも聴いてもらえればわかるとおり、同じラップでも健全なのは一目瞭然ですから(笑)、普段ラップを聴かない人やむしろ苦手な人にも聴いてほしいですね。というか、普段は全然聴かない人のほうが多いでしょうからね。

なので、曲調やサウンドもいかにもヒップホップど真ん中というのはそんなになくて、「ポップスとしても聴けるクラブミュージック」というちょっとボーダレスな感じを意識して曲作りをしていますね。

ただ、そうはいっても普段ラップを聴いている人が聴いてもおかしくないものにはしたいですけどね。ラップのスキルはまだまだですが、「リリック(歌詞)はハンパねえ!」って言ってもらえるように(笑)

―ところでラップといえば押韻(韻踏み、ライム)という要素がありますが、これについてはどうお考えですか?

韻はなるべく踏みたいですね。なんでかって、考えるのが楽しいですから。でも「常総」の頃は最後の1文字でしか韻が踏めませんでした。例えば、冒頭の「茨城県西常総」「294号城のま」って最後の「」と「」しか韻を踏めてないんですよ(笑)。

最近は慣れてきていろいろ思いつくようになりました。やはり何事も訓練で、毎日意識していると思いつくようになるんですよね。

韻という縛りがあることで逆に創造性が高まって、思いつかない表現が出てきたりするんですが、これって文字数に縛りがある俳句なんかも同じですよね。それがラップの醍醐味の一つだと思っています。もちろん曲によって踏みまくっていたり、言いたいこと重視でそんなに踏んでいなかったりという差はありますけどね。

―でも英語と違って日本語だと韻が踏みにくいですよね

はい、英語が強弱でアクセントをつけるのに対して、日本語は高低のアクセントなので、押韻に向いていないともいわれてますね。

一応、母音を2文字以上揃えるのが基本なんですけど、それだけだと韻だとわからない場合も多いので工夫は必要でしょうね。例えば、「愛」「橋」「旅」は母音がすべて「あい」ですが、これで韻を踏んでも普通わかりませんね。

なので、私は子音も合わせたり、いわゆるダジャレ的な韻踏みも普通にやりますね。例えば、「茨城最下位もう一回」のサビは「茨城魅力度最下位 取り上げられっと毎回 宣伝効果は絶大 ビリでもまあいーかい」なんですが、「最下位」「毎回」「まあいーかい」は4文字すべての母音が同じ、つまり、4文字で韻を踏んでいて、さらに「かい」という子音2文字も合わせていますよね。「毎回」と「まあいーかい」に関してはダジャレというか子音が4つとも同じですし。

日本語の場合はこのぐらいやらないと韻を踏んでる感が出ないのかなと。もちろん、人によってはダジャレっぽくてカッコ悪いと思う人もいるでしょうが、イバラッパーはカッコいい歌詞よりも面白い歌詞重視なので、そこは全く問題ないですね。

それ以外にも韻踏みのテクニックはいろいろあるので、韻は踏めものるならどんどん踏んでいきたいです。

広まったきっかけは?

―これまでの反響はいかがですか?

実をいうと、最初はほとんど反響がなかったんですよ。SoundCloudっていうサービスに曲をアップして、ホームページに歌詞を掲載して、自分のラジオ番組でも紹介していたのですが、ほとんど広がりを感じませんでした。

なんでかな?って考えたのですが、一番の原因は、ネットは情報の流れが速いので、じっくり音楽だけ聴いていられないってことなんです。特に今はツイッターでもフェイスブックでもタイムラインがどんどん流れていくじゃないですか。そんななかで3~4分間じっと音楽だけ聴いてるのがめんどくさいんですよ。その間に目は使わないから他のモノを見たくなっちゃうんです。それで、ちょこっとだけ聴いて、すぐ他のページに行っちゃってるんだなって思いました。これはダメだなと。

―それで、どうされたわけですか?

耳だけでは足りない、目でも見てもらわなきゃダメだってわかったので、YouTubeにアップすることにしたんです。それで流れが変わってきたというか、明らかに反響が大きくなってきました。

最初に載せたのは「鹿行のテーマ」なんですが、こちらはそんなに反響がなかったんですね。自分が鹿行地区に知り合いが少ないというのと、単に歌詞を載せて音楽を流しただけだったので。

でも、次に「常総」をアップしたときにはすごい反響がありまして、やはり地元というのもあるし、常総市の名所・名物を写真付きで紹介したのがよかったのだと思います。ここで気づいちゃったんですよ。これって3分間の市町村紹介ビデオだなって。これはすごい発見だ!と興奮しました(笑)。

―思わぬ発見があったのですね

イバラッパーの動画を見てもらえば、3分でその市町村がどんなところなのかわかるわけですよ。これって考えてみたらすごくないですか?だって、一般的に市町村が作ったビデオやパンフレットって正直つまらないというか、立場上、ヘンに面白くしたりできないから、それだと伝わらないというか、印象に残らないですよね。それに取って替わるものになり得るし、これをやることでみんなが得するなって思いました。

やはり地元を紹介する曲があるのは、そこに住む人にとっては純粋に嬉しいと思うんですよ。市町村だって今はPRに力を入れていますから、動画が地元のPRにつながります。もちろん私は見てもらえて嬉しいわけで、これは近江商人がいう「三方良し」だなと。

今後の展望について

―では今後の展開についてお聞かせいただけますか。

できるかどうかはわかりませんが、茨城県内44市町村全制覇を目標に掲げていますので、県内全域の曲を作っていきたいです。別に作るのは私だけでなくていいので、私の活動が少しでも刺激になって、茨城がご当地ソングだらけになったら最高ですね。それがこの活動をはじめたきっかけだったわけですから。

ちなみに現在はどんな状況ですか?

地元の県西地区だと「常総」、「坂東」、「下妻」、県南だと「つくば」、「つくばみらい」、県央は「笠間」、鹿行は「鹿行全域」の曲があります。一応、水戸も「マッスル黄門のテーマ」というのがあるので、すでに作ったともいえますが(笑)。

今後については、最近ありがたいことにうちの市の曲も作ってくださいというリクエストをたくさんいただくようになりまして、そのリクエストにはなるべくお応えしたいと思っています。

ただ、一気に全部は作れませんから、そこは優先順位を設けて、イベント(ライブ)に呼んでいただける市町村を優先して作るようにしています。大人の事情が最優先です(笑)。

趣味の延長かと思いきや、そうでもないんですね(笑)

イバラッパーの音楽活動は、趣味だとは全然思ってないんです。趣味だと続けるのは難しくて、むしろ仕事だから続けられると思ってるんですよ。ちょっと時間の空いたときに曲を作るのでしたら全然趣味でいいんです。でも今のペースでどんどん曲を作っていくとなると、仕事じゃないとできません。やはりイバラッパーという存在をある程度知っていただくためには、空いた時間にちょこちょこやって5年、10年かけてたらダメなんです。

ただ、仕事の時間を使って曲を作っているわけですから、そのぶんの費用はどこかで回収しないといけないですよね。それをCDの販売イベント出演(ライブ)でまかなっている状況ですね。茨城王が本を出版したり、講演するのと一緒です。

―なるほど、茨城王は本の出版や講演、それがイバラッパーだとCDやライブになるわけですね

私の中では茨城王の活動にもう一本の柱ができた感覚なんです。今まで講演やイベントにたくさん呼んでいただいていますけど、イベントよりも講演活動が中心だったんですね。イベントは外が多いので、室内での講演のようにパワーポイントも使えないし、また、トーク系は歌や踊りなどの音楽系と比べてインパクトに劣るので、外でやるのはなかなか厳しいんですよ。それがイバラッパーという柱が一本増えたことで、外のイベントにも完全に対応できるようになった…そんな感覚です。

ライブ活動について

―最初からライブもやるおつもりだったのですか?

いや、ライブのことはまったく考えてなかったんです。人前でラップなんかできないし、はっきりいって宅録だからラップできたんですよ(笑)。というのは、自宅なら何回間違ってもOKじゃないですか。いいのが録れたらラッキー!って、そんな感じで録音してたので(笑)。

なので、たぶん私のことを昔から知っている人は「えっ、ライブなんてできるの?」って印象だったと思うんですよ。曲を作ったときやラップを始めた時もまあそんな感じだったとは思いますが、まさかライブまでやるとは・・・と思った方が多かったんじゃないですかね。

―それがどうしてライブをやることになったんですか?

現在ライブでサイドMCをやってもらっている「MCあよほー」さんとの出会いがあったからですね。

あよほーさんは私の「あよほー」という曲をお友達から紹介されてユーチューブで聴いたそうなんです。そしたら、これが相当ツボにはまったそうで、わざわざ連絡をくださったんですね。それで私も会いに行きまして、そこでぜひライブをやりましょうと話を持ちかけられました。熱く説得された感じです(笑)。それで私もだんだんその気になって(笑)。

全然自信はなかったのですが、やはりライブができたほうがいいし、これから出演オファーされたときに「できません」っていうのもカッコ悪いんで(笑)、まずは練習のつもりで出てみようという話になりました。

―2014年4月の「坂東さくらまつり」ですね

はい、さすがに出演経験がないのでギャラはいただけないなと思いまして(笑)。まあそもそも坂東さくらまつりは基本的にノーギャラで出たい人が自分で申し込みをするかたちなので、あよほーさんに出演の申し込みをしていただいて、それがデビューライブとなりました。

igh01

―それからだいぶライブ経験も重ねられているようですね

そうですね。ありがたいことにその後出演オファーをたくさんいただきまして、私も徐々にライブ慣れしてきた感じです。

とはいえ、歌詞を間違える、忘れるというのが常態化しておりまして(笑)、まだまだごじゃっぺだなと思っています。まあ、ハプニングもまたライブの醍醐味ですが(笑)

ただ、ライブは曲だけじゃなくて合間のトークも含めてのライブなので、トークのほうも楽しんでもらえているかなとは思いますね。そっちのほうが私も慣れているといいますか(笑)。

最後に

―では最後に読者のみなさんに一言メッセージをお願いします

茨城にご当地ソングを増やすことで、自分の住む地域が好きになる、誇りを持てる…そんな活動をしていけたらと思います。YouTubeに何本か動画をアップしていますので、まずはそちらをチェックしてみてください。それで、興味を持ったらCDを聴いたり、ライブに足を運んでいただけたらと思います。

茨城王YouYoubeチャンネル

また、イベントの出演依頼もお待ちしております。まだ曲ができていない市町村が多いですが、なるべく早めにオファーをいただければ、曲を作ったうえで出演させていただくことも可能ですので、どうぞよろしくお願いいたします!

ibarapper02_1038